明日何しようかな?#125

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~六章(#1~#116)のまとめ読みはこちら

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景子


「大人になれてますか?」

心菜は自分で宣言した通り変な質問を手紙に残していた。何その質問。そう言いかけた。

そのとき二人の顔を見ると、二人とも何とも言えない表情をしていた。喜怒哀楽のどれでもない、考え込むような、困っているというのが一番近い表情をしていた。

……大人か。

真っ先に思い浮かんだのは莉子の顔だった。

莉子には莉子の生き方があった。莉子は莉子として歳をとった。それと平行して、私も私の生き方で歳をとった。

現状の莉子の様子を聞くかぎり、私とは会ってくれそうだ。そこで色々と話をすることになるだろう。そしてきっといっぱい言葉に詰まって、いっぱい泣いて、いっぱい反省するんだろう。

そこに「正解」はあるのかな?

莉子が失踪してから、私と莉子は別の人生を歩んだ。これから莉子の話を聞いたら、莉子の方が立派な人生を歩んでいるかもしれない。そりゃ、罪は罪だし、悪い事をしたのは間違いない。でも、胸を張って自分の人生が「正解」だったって言えるだろうか?

今の時点では、私はそこまでの自信がない。

それと「大人になる」は少し意味が違うのかな。だけど、自分がもう少し「大人」だったら、何か莉子に会う自信もついていたのかもしれない。もう少しだけ自分の人生に胸を張れたかもしれない。

二十四歳になって、働いて、年下と接する機会も年上と接する機会もぐんと増えた。年下の人の中には自分より「自分」を持って自信にみなぎっている人もたまにいる。年下なのに自分より大人だなと感じて、心の中でモヤモヤと劣等感が浮かぶ。

逆もある。年上なのに「こいつ子どもだな」ってパターンだ。そんな言葉使い、そんな行動、私はとうの昔に卒業したよ、って心の中で呟いたことが何度あったか。

その違いってなんなんだろうな。「年下の大人」はどんな人生を歩んでいるんだろう。「年上の子供」はどんな人生を歩んでいるんだろう。そして、私は周りにどう見られているんだろう。

目の前にいる光輔は私にとって、私よりも少し大人だ。

今回の事件の騒動でも、そう感じることが多くあった。光輔は光輔の信念があって、私の弱い部分を補ってくれた。私のことも、心菜のことも、渚さんのことも、必死に思いやって生きている。行き過ぎた思いやりで少々荒っぽいところがあるのも否めないけれど、それを上回る優しさが光輔のいいところだ。きっと会社でも先輩や後輩から好かれているんだろう。

心菜は子どもなのかもしれない。

病気になったこと。あの日事件現場で音を聞いていたこと。全部今の今まで黙っていた。別にそれを咎めるつもりもないし、否定的な意味で「子ども」と思ったわけでもない。私たちとすれ違ったせいで心菜は心に傷を負って、自分の殻に閉じこもっていたんだ。「もうすぐ死ぬかもしれない」そんな大事なことも言い出せないくらいに。

「みんな忙しいだろうし、自分のことで精いっぱいだろうけどさ。でもこれからはちゃんと、ちょくちょく連絡取り合おう。で、いつかまた笑って会おうよ。そのときは大人になりましたって胸張って言い合おうぜ」

光輔は三人で会う約束の話をした。私は止めようとした。だって、それは叶わないから。一瞬「なんてこと言うんだ」って思った。空気が読めないというか、心菜の気持ちも考えろよって。

「私、約束守れないかもよ?」

案の定、心菜は遠まわしに否定する。

「だったら俺らが会いに行く。別に百白村じゃなくたっていい。景子と二人で心菜に会いに行くから。約束な?」

そう聞いた瞬間、光輔の言いたいことが分かった。光輔は心菜とお別れするつもりなんてないんだ。「死ぬことなんてどうでもいい」とでも言いたいような言葉だった。

「どうなのそれ?人によっては余計に傷つく人もいるよ」とも思う。でも、これが光輔だ。光輔なりの優しさだ。中学のときと変わらない、ちょっとズレた優しさ。

「ありがと」

そして、心菜が好きだった光輔だ。

「次、景子の番」

光輔は私に手紙を開けるように促す。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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