明日何しようかな#138

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~六章(#1~#116)のまとめ読みはこちら

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~~~~~~~~~~~~~~~

景子


「…………数えますね」

岸さんは一枚一枚丁寧に数え始める。

「袋にくらい入れてきなさいよ」

「……ああ。たしかに」

「借金したの?」

「そんな!グッバイぐっちーの収入です」

そんなに稼げるのか、あの仕事は。そんなに稼げるんだったら私もやろうかと思う。だいたいそんなに愚痴をためている社会人が山ほどいるのもいかがなものかと思う。

「それはどういうお仕事ですか?」

岸さんの聞き方は、本当にいけない仕事をしている人への聞き方だった。私とすみれさんは全力でグッバイぐっちーの説明をする。それでも目の前に三百万円があることは腑に落ちていない様子だった。それは私もだ。

「はい、たしかに。三百万円ありました」

そして、数日後手術は無事行われた。ついにすみれさんの腕からタトゥーが消えた。

そのまた数日後、術後の観察のために病院に来た。すみれさんはこれ見よがしに半袖のシャツを着ている。

「寒くないの?」

「全然」

まだ気温は半袖という感じはしなかった。たぶん半袖が着られるのが嬉しくてたまらないのだろう。

肝心の手術の跡はと言うと、うっすらとタトゥーの後は残っている。これが限界なのかなとも思うが、完璧にきれいさっぱりというわけにはいかないみたいだ。だけど、少しお化粧すれば誤魔化せるだろうし、なにより見て「あっ」とはならない。十分、成功したと言えるだろう。

ふとすみれさんに目をやると、なぜか涙が頬を伝っている。

「え?なんで?なんで泣いてるの?」

「だって……だって、景子さんが……」

「大丈夫?」

私は慌ててハンカチを貸す。そこに岸さんがやってくる。

「どうされました?」

このシチュエーションだけ見ると、私がすみれさんを泣かせたみたいだ。なんか前もこんなことがあった気がする。

少し落ち着いたすみれさんが、涙をすすりながら言う。

「景子さんのおかげで、私、うまくやっていけそうだなって、うぅ……」

私はすみれさんの背中をさする。まあ、これで良かったんだろう。色々とツッコミたいことや言いたいことはあるんだけど、彼女のことは救えたみたいだ。

「景子さんは私の「師匠」です。これからは「師匠」って呼ばせてください」

「は?」

「師匠のおかげでこれからもなんとかやっていけそうです。本当にありがとうございます」

茶化してるのかとも思ったが、彼女の目は真剣そのものだった。師匠か……。いや別に嬉しくないことはないけど、師匠になりたかったわけじゃないんだけどな。

「分かった分かった。ありがとうね」

「師匠、ありがとうございます」

「あと、岸さんにもちゃんとお礼言いなさいよ」

「岸さんありがとうございます」

「あ……はい。あのこちらの問診票に記入してもらっていいですか?」

極めて冷静な岸さんを横目に、すみれさんは泣きじゃくりながらペンを動かす。痛みはないかなど、口頭でも改めて聞かれていた。結局、何一つ問題は無く、すみれさんのタトゥー問題は解決したみたいだ。

帰り道、すみれさんのアトリエに寄る。行くたびに看板も派手なものになっていて、良くも悪くも目を引くようにはなった。

「これも師匠のおかげです」

「やっぱり師匠は恥ずかしいからやめない?」

「いいえ、師匠です。師匠は師匠です」

こういう頑固なところがたまにあるのが分からない。

「だって、病院の話し合いとかも毎回着いて来てくださったんですもん。感謝してもしきれないです」

……たしかに。今思えば、別に私が行かなくてもよかった場面はあった。私は自然に自分のスケジュールを見てから、すみれさんのスケジュールを決めていた。なんでだろう。

「似顔絵とかも私じゃ絶対に思いつかなかったです」

まあ、強いて言えば「意地」だと思う。意地でも彼女のことを守りたい、救いたい。それだけ。

「これからどうするの?就職するの?」

「うーん」

元はと言えば、タトゥーのせいでまともな仕事に就けない。だから、タトゥーを消そうって話だった。それが今や「グッバイぐっちープレミアム」で三百万円を稼ぐ人になってしまった。

「悩んでるんですよね。このまま絵を描き続けていいのか。愚痴を聞く仕事も楽しくやれてるんで、悩んでます」

「やりたいこと、好きにやればいいよ」って言いかけた。でも、なんか無責任な気がして言えなかった。彼女はたまたま才能が見つかって、お金を手に入れた。でも本当にやりたいことは絵を描くこと。本当にやりたいことをやるって難しい。このアトリエだって、あと十年続けられるかと言われれば正直微妙だ。

「でも…………、ちょっと楽しみなんですよね。自分が将来どんな人になってるか」

「…………」

「まだ絵を描き続けているのか。愚痴を聞き続けているのか。それとも全然違う職業になっているのか。今はそれが楽しみです」

「楽しみ」ね……。分からなくもないけれど、私はそんなこと言えないな。たぶん私とすみれさんが決定的に違うのはそこだ。すみれさんはどんなに辛い状況でも、どんなに苦しい状況でもポジティブに前を向いている。それがいいのか悪いのかは別として。

「ふふ」

「なんで笑ったんですか?師匠」

「いやなんか。うーん……」

私は言葉に詰まる。この気持ち、なんて言えばいいんだろう。

「「師匠」も悪くないなと思って」

「ええ!?嬉しいです!」

誤魔化しちゃった。まあいいや。

「すみません。似顔絵描いてくれるのってここですか?」

若いカップルがうしろから話しかけてくる。

「ああ!はい!私です。私が長谷川です」

すみれさんは慌てて深く頭を下げる。

「あの、僕たちの似顔絵お願いしたいんですけど……」

「はい!分かりました!今すぐに準備します!」

どうやら私はお邪魔のようだ。

「お客さんが来ちゃいました、師匠」

お客さんの前でも「師匠」なんだ。まあそうなるか。案の定お客さんは「え?」と驚いている。

「うん。じゃあね」

「はい!またランチ連れてってください。……あ、こちらへどうぞ」

私は恥ずかしいのでそそくさと帰る。

明日はお姉ちゃんと会う予定だ。武道館で会って以来。この予定が決まってから、ずっと不安で不安でたまらなかった。会いたくないとすら思う自分もいた。

だけど、すみれさんみたいに「楽しみ」って言うことにしよう。

さっきは誤魔化しちゃったけれど、これもたぶん「憧れ」とか「嫉妬」なんだろうな。みんな自分には無い『何か』を持っている。「熱意」だったり「ポジティブ」だったり。そういう言葉には出来ない『何か』を持っている。

私もその『何か』をたくさん持てるように地道に生きていこう。地道に。

風がいつもより温かく感じる。自分が火照っているのか、それとも夏が近づいているのかは分からなかった。私はいつもより大きな一歩で家へと歩き出す。

明日何しようかな?


景子編、おわり


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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明日何しようかな?#137

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景子


事件のこと、タイムカプセルのこと、目まぐるしい日々がやっと落ち着いた頃。私の一番の悩みの種は彼女になった。そうすみれさんだ。

まずはちゃんと話さないといけないことがたくさんあったので直接会った。事件が解決したことはすみれさんも連日の報道で知っていた。

「大丈夫ですか?」

「私は大丈夫」

すみれさんは優しく何度も何度も「大丈夫ですか?」と私を心配してくれた。過度なくらいに。事件のニュースが流れた次の日からLINEや電話でも心配してくれていた。そのたびに私は「大丈夫だよ」と返していた。

事件のいざこざを私から話し終えたあとは、すみれさんの近況を聞く。

「なんか似顔絵とか描いてみたら?」

「ああ、なるほど」

そんな会話をしたのは、だいぶ前。

「景子さん。似顔絵はじめました」

そんな報告を受けたのは、ちょっと前。

「で、似顔絵は順調?」

「はい!」

近況報告で会ったときに元気よくそう答えてくれた。

本当は人物を描くのは、そこまで得意ではなかったらしい。すみれさんと一緒に色々と調べたが、ああいう似顔絵は時間も売りの一つ。ものの数分で描ける技術が必要らしい。

あとはイラストレーターによっては、過度にデフォルメするなどのユーモアも必要らしい。とんでもなく目が大きかったり、歯が出てたりする絵を見たことある気がする。

「私、あんなの描けないです」

まあすみれさんの性格なら、たしかに無理かもしれない。

「じゃあ一回私描いてみてよ。思ったままに」

私は被写体になる。すみれさんはササっと手を走らせる。

「出来ました」

そこには繊細なタッチで描かれた私がいた。絵のことは何一つ分からないけれど、すみれさんにしか描けないような優しさがある。

「私、こんなに笑ってた?」

「そこは私が付けたしました」

絵の中の私は笑顔が「はじける」ような表情だった。なるほど、そういうデフォルメもありかもしれない。

うん。これなら商売になるんじゃないか。そう思った私はアトリエで似顔絵の仕事もするように薦めた。すみれさんも描く時間を短縮できるように努力し続けているみたいだ。

「お客さん、どのくらい来てる?」

「週に二人くらいは来てます」

「そんなに!?」

思っていたより多い数字が出てきて、思わず声が出てしまう。圧倒的な成長としか言いようがない。食っていくには厳しいのかもしれないけれど。

ただ、お金の心配はもうしていなかった。

林さんからも連絡があった。グッバイぐっちーの代表の憧れの女性。私の事件のことを心配してくれて、電話をもらった。

「すみれさん?あの子とんでもないことになってるよ」

なんでもお客さんからの指名が絶えないらしく、数多の聞き手のなかでぶっちぎりの指名率らしい。林さんはそれを受けて、新しく「グッバイぐっちープレミアム」を設けて、ワンランク上のサービスも始めた。プレミアムサービスの聞き手の第一号がすみれさんらしい。

「愚痴の方は順調みたいね」

「はい……」

すみれさんは照れながら答える。いやらしいので深くは聞かなかったが、生活できるくらいには儲けているみたいだ。

そんな長い長い話を終えて、やっと本題に入る。右腕のタトゥー。これをどうするかを決めないといけない。

タトゥーを除去してくれるはずだった早見はこんなことになってしまったので、当然無理。じゃあどうするか?それの話し合いが会う一番の目的だった。

「消したいです。消します」

すみれさんは迷うことなく、きっぱりとそう言い切った。

まあそう言うだろうなとは予想していたので、知り合いのつてを使って新しい美容整形外科医を探した。早見のトラウマがあるので、全員が胡散臭く見えて苦しかった。それでもなんとか探し当てた人物。

「岸さん。この人なら頼りに出来そう」

女性のお医者さんで、タトゥー除去もよく受けているらしい。すみれさんの意思も確認できたので、私はすぐに連絡を取った。

とんとん拍子に話は進んだ。岸さんと直接会って、タトゥーを入れた経緯や早見の手術を受ける予定だったことなど、全てを話した。岸さんも快諾し、あっという間に手術となった。はじめからこのくらい簡単に決まれば苦労しなかったのにと思うくらい。

「このタトゥーの大きさだと……」

岸さんが叩いた電卓には、ゼロがずらっと並ぶ。……うん、三百万。何回見ても、三百万が示されていた。すみれさんも何度も指を折り数えている。

しかし、すみれさんはすぐにこう言った。

「はい、わかりました」

そしてまた違う日。この日は手術直前の説明を受ける日だった。

「お金の方は用意していただけましたか?」

岸さんは恐る恐る聞く。まあ岸さんからしたら、この人が三百万を用意できるなんてのは信用しにくいだろう。

すみれさんは手提げのバックから現金で一万円の束を取り出した。厚さは三センチくらい。すごい、本当に三百万円だ。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
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光輔


「こういう似顔絵のお客さんっていっぱい来るんですか?」

「はじめてばっかりのときは全然だったんですけど、ちょっとずつお客さんも増えてて、最近は週に二人とかですね」

それって多いのかな?多い気もするし、少ない気もする。

「でも「似顔絵とか描いてみたら」ってアドバイスしてもらえて、お客さんも増えたんです」

「誰に?」

「師匠です」

「…………」

「師匠に「看板出してみたら?」とか「似顔絵描いてみたら?」とか言ってもらって、私アトリエを続けることが出来たんです」

「ふーん」

芸術家ってやっぱり師匠がいるものなのかな?なんかテレビとかで書道とか華道の達人を見たことがあるけれど、長谷川さんにもそういう師匠がいるんだろう。

「良かったら、名前も入れられますけど」

「あ、お願いします」

「じゃあ、こちらに入れて欲しい表記で名前をお願いします」

俺は差し出された紙に「福山光輔・渚」と書く。

「福山様……」

「はい」

長谷川さんの表情が固まる。

「どうかされました?」

長谷川さんは答えない。

「長谷川さん?」

「あっ」

「どうかされましたか?」

「いえ、なんでも!」

同姓同名の友達でもいたのかな?長谷川さんは少し固まっていたが、すぐにさっきまでの笑顔に戻る。

お会計を済ませ、アトリエを出る。

「ありがとうございました」

深く深くお辞儀をする長谷川さんにお礼を返して、俺は店を出た。

ついに出発の日。大きなトランクケースを転がし、空港へやって来た。

似顔絵の色紙は手荷物のかばんに忍ばせてある。あれだけ素敵な絵だから、最後のサプライズにしようと思ったからだ。

搭乗手続きを済ませ、あとは飛行機に乗り込むだけ。休みに帰ってくることも出来るだろうが、しばらく向こうでの生活が続く。

渚はもちろんお見送りに来てくれた。羽田部長や松尾など、会社の人たちも何人かいる。俺はその全員と握手を交わす。

「福山君、よろしく頼んだぞ」

羽田部長の言葉。

「ありがとうございます」

そして松尾。みんな「頑張れ」とか「元気で」とか一言ずつかけてくれるのだが、松尾は何も言わない。いや、言えない。信じられないくらい泣きじゃくっているからだ。

「松尾、やめろって。恥ずかしいだろ」

「※÷ΔΛΦ〇ΨΣ……」

渚も泣いてないのに。他に誰も泣いてないのに。

「松尾!」

「はい……」

「泣くな!」

「…………」

松尾は口をギュッと閉め、俺の顔を見る。

「日本に帰ってきたとき、お前がどんだけ成長してるか確かめるから、覚えとけよ」

「はい!」

松尾が俺の手を握る強さが強くなる。

「元気でな」

「はい!」

かなり強く松尾の肩を叩く。

会社の人と挨拶を交わし終えて、最後に渚が残る。

「ありがとうな、俺のワガママ聞いてくれて」

「ううん。全然」

「寂しい思いさせるかもしれないけど、許してほしい」

ダメだ。こんなこと言ってると、俺が泣きそうだ。松尾も見てるから泣けないけど。

俺はカバンから例の色紙を取り出す。

「これ」

「なにこれ?」

「開けて」

渚は袋から色紙を取り出す。中身を見て驚く。

「え、すごい!似顔絵?」

「うん、描いてもらった」

多くはしゃべらないが、温かい絵を見て、渚もいい表情をしている。

「ありがとう」

渚は色紙を袋に戻し、大事に持ち抱える。

「寂しくなったら電話するね」

「うん」

もう行かなきゃ、時間だ。

「心菜のこと、よろしく頼んだぞ」

俺は渚にだけ聞こえる声で言う。

「うん」

心強い返事が返ってくる。

「皆さん、お見送りありがとうございます。行ってきます」

会社のみんなが手を振る。

「行ってくる」

渚にだけ改めて言う。

「行ってらっしゃい」

渚も手を振る。

俺はみんなに背を向け、飛行機へと歩きだした。

寂しくないわけがない。不安がないわけがない。これからの生活は何が起きるか全くもって予想がつかないし、何度も何度も日本が恋しくなるだろう。

だけど会社の人が俺に期待してくれている。俺にしか出来ない仕事がある。それを無視することは出来なかった。

「渚、ごめんな」

一番申し訳ないのが渚。俺は自分がどうしてもこの仕事を受けたいこと、だけど渚には一番迷惑をかけてしまうのが辛いこと、全部を本音で言った。

渚の返事はこうだった。

「私は誰かのために一生懸命頑張ってる光輔が好き。たぶん、私だけじゃなくてみんなそうだと思う。私は光輔が誰かのために頑張るのなら応援する」

「…………」

「光輔ならどこに行っても大丈夫だと思う。離れてても私のこと心配してくれるだろうし、浮気もしないだろうし」

渚はフフっと笑う。冗談なのは分かったけれど、俺には笑う余裕はなかった。

「行ってきなよ。私は大丈夫。私は光輔の妻だけど、光輔の応援団でもあるから、頑張る光輔を応援しない選択肢はないよ」

「……寂しくない?」

「光輔がいないのは寂しいけど、光輔がやりたいことやれない方がもっと寂しい」

飛行機は離陸し、あっという間に日本の海岸線が見えるところまで来た。

もし妻が渚じゃなかったら俺は今ここにいないかもしれない。申し訳ない気持ちはもちろん今もあるし、これからもずっとあるだろうけど、でもあんな言葉を言えるのは渚くらいだと思う。

恵まれてるんだな、俺は。家族も友達も恵まれている。そんなたくさんの大事な人のためにも、中途半端なことは出来ない。

俺は頭は良くない。口も悪い。足は昔は速いつもりだったけど、そうでもなかった。

自分のいいところってなんだろう。自分の自慢できることってなんだろう。

そんなこと考えると不安で不安でたまらなくなる。たぶんみんなそうなんだろうけど、でもその「みんな」より自分の方が劣ってるんじゃないかって不安になる。

俺はその不安を無くせるように目の前の「明日」を頑張ろう。誰かのためでいい。誰かのため〝だけ〟でいい。渚、景子、心菜、その他みんなみんな。あの人たちのために必死に頑張ろう。

やるしかない。やってやろう。あいつのために。

明日、何しようかな。


光輔編、おわり


~~~~~~~~~~~~~~~


【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

【むかいくんを応援したい!感想を送りたい!という方へ】

・一番嬉しい最上級に喜ぶやり方

Twitterで「#むかブロ」をつけて感想を投稿する

ややこしくて申し訳ないのですが、正式には「むか」はひらがなで「ブロ」はカタカナです

#明日何しようかな もつけてもらえると大変喜びます

このブログへのリンクが貼ってあるツイートを引用リツイートしてもらえると感無量です


・ちょっと嬉しいやり方

Twitterでリプライを送っていただく(@mukatsubu)

誰かに見られたくなければ、DMでもかまいません

DMは誰でも送れるように開放しています

現在閲覧しているはてなブログ「むかブロ?」はコメント欄を封鎖する予定です(気づくのが遅くなると思うので)

なので、たまに更新しているアメーバブログ「むかブロ!」にコメントいただけると嬉しいです

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明日何しようかな?#135

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~六章(#1~#116)のまとめ読みはこちら

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光輔


「そうなんですね、フクヤマさんの今後が明るい未来になることを願っています」

孤独を感じてついつい頼ってしまった、「グッバイぐっちー」。電話口で見知らぬ人に愚痴を聞いてもらえるというサービスだ。

俺は最初に愚痴を聞いてもらったナオコさんが一番心地よく愚痴を言うことが出来た。ナオコさんは俺の愚痴を細かく覚えてくれている。今日かけたときもそう。

フクヤマさん!お久しぶりです」

しばらく、このサービスを利用していなかったが、それでも俺のことを覚えてくれていた。

ナオコさんがどんな人なのか全く知らない。わざわざ報告する必要なんて全くもって無い。

「俺、シンガポールに転勤することになったんです。だから、もう「グッバイぐっちー」を卒業します」

なんとなく、これだけはちゃんと伝えておきたかった。

渚とも相談し、俺はシンガポールへの異動を受けることにした。渚は着いてきてくれることも少し浮かんだそうだが、さすがにそこまでしてもらうわけにはいかなかった。心菜のこともあるし。

いわゆる単身赴任。独り身で異国の地へ行くことになった。上司は「いつかは戻れるようにする」と言ってくれたが、具体的にいつシンガポールでの勤務が終わるのかは明言してくれなかった。ひょっとすると一年もせず戻ってくるのかもしれないが、上司と話した感じそれは無さそうだ。

そうと決まってから、俺は日本の色々なお世話になった人に片っ端から連絡した。両親はもちろん、高校や大学の友人にも連絡した。景子、心菜、タッチにも自分の口から説明した。そして、最後にやっぱり言っておかないと気が済まないと感じたので、ナオコさんにも連絡することにした。

「ナオコさんのおかげで元気もらえた。本当にありがとうございました」

「いえいえ、そんな……」

お世辞でも誇張でもなんでもなく、本当に元気をもらえた。

「あの、最後に……ひとつだけ質問いいかな?」

「はい」

「しばらく簡単に会えない日々が続くから、妻に何かプレゼントしたいんだけど、何がいいかな……?」

実際に言ってみて恥ずかしくなる。だけど、いくら考えても何もいいアイデアが浮かばなかった。俺の周りには女性の友達は少ない。会社で話す人はだいたい男だ。景子と心菜はなんか聞きづらい。「女性がもらって嬉しいもの」は俺にとってかなりの難題だった。

「……うーん、難しいですね」

「そうだよね、ごめんなさい」

「あ、でも」

ナオコさんは案の定戸惑っていたけれど、一つ案を出してくれる。

「絵とかどうですかね。二人の似顔絵とかいいかなって思うんですけど……」

絵か……。まったくそんなアイデアは無かった。もらって嬉しいのかな?正直共感はあまり出来なかったが、でもナオコさんが言うくらいだから、とも思ってしまう。

「分かった、ありがとうございます。参考にする」

「はい」

「じゃあ、これで」

「はい」

ナオコさんはいつも通り電話を切る。これでもう、このサービスにお世話になることはないだろう。たぶん。

翌日、俺はスマホでの検索をもとに似顔絵を描いてくれる場所を探した。何か所かヒットしたが、どこがいいのか全く分からない。とりあえず、直感で「良さそう」なところに実際に行ってから決めようと思った。


長谷川すみれアトリエ
FLOWER


看板とは思えないような看板が雑居ビルの前に置いてある。看板だけで十分アートになるくらい、細かく花の絵が描かれている。「似顔絵、やってます」と値段なども書いてくれている。ビルに目をやると、アトリエは二階にあるみたいだが、入り口も明るくて入りやすい。

分からないけど、まあここでいいか。俺は階段を上がり、アトリエのドアを開いた。

「いらっしゃいませ」

「あの……、似顔絵を描いてほしいんですけど……」

「ああ!はい!ありがとうございます!」

たぶんこの人が長谷川さんだろう。髪の長い女性は深いお辞儀をする。

そのあと、妻へのプレゼントにすることなど細かい話をして、予定通り似顔絵を描いてもらうことになった。俺と渚のツーショット写真を何枚か見せる。これを基にして、二人の似顔絵を描いてくれるらしい。

「コーヒーか紅茶、どちらがいいですか?」

「え?いや、そんな……」

「アトリエ」というものに入るのは人生初だから妙に緊張している。飲み物までサービスしてくれるみたいだが、それって普通なんだろうか。分からないけど、ご厚意には甘えるべきなのかな。

「コーヒーで」

「分かりました」

そのあと、コーヒーのにおいが充満した部屋で、俺は絵が出来上がるのを待った。数十分で仕上がるそうだが、長谷川さんは真剣な目つきで色紙に向き合っている。たぶん、話しかけないほうがいいだろうってことで、俺はアトリエの中をキョロキョロしながら座っていた。

「出来上がりました」

長谷川さんは色紙を見せてくれる。そこには笑顔の俺と渚がいた。こういう似顔絵って、こうなんと言うか写真の加工みたいに不自然に美化されるもんだと思っていた。だけど、色紙の絵は「不自然さ」は無い。二人の等身大の笑顔を丁寧に丁寧に描いてくれていて、温かみを感じる。

「おお……」

俺は声が漏れてしまう。

「気に入ってもらえましたかね?」

「あ、はい!もちろん!素晴らしいです。めちゃくちゃ嬉しいです、はい」

どうこの感情を表現していいか分からず、ぐちゃぐちゃの日本語で褒める。うん、たしかにこの絵であれば、妻も喜んでくれるだろう。

「良かった……」

長谷川さんも安堵している。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

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卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

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実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

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明日何しようかな?#134

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温かい目で読んでください

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心菜


やっぱり。

さっき新幹線の中で光輔は申し訳なさそうに話してくれた。

「タッチにも会えないかなと思って電話したんだけど、ちょっと厳しいかも。仕事が忙しいらしい」

「そっか」

景子も残念そうにしている。私も同じ気持ちだった。

光輔は私たちが会う約束をしてから、タッチとも連絡を取ったらしい。タッチは今も教師を続けているそうだ。百白中学校はとっくの昔に転勤で離れて、今は府内の中学校に勤めている。中堅の教師としてバリバリ働いている。光輔はそんな話をしてくれた。

莉子ちゃんの事件のこと、私のことも時間をかけて話し合ってくれたらしい。そのうえで今日サプライズで会えないかなと頼んだけれど、結果無理そうでした、というのが新幹線で光輔がしてくれた話だった。

「どうしても会いたくて、仕事を切り上げてくれたって」

四人は少し速足で山を下りながら、光輔の話を聞く。

「車飛ばして来てくれるらしい。で、帰りも新大阪まで送ってくれるって」

私たちの予定はもう無い。学校もさっきタイムカプセルを開けたついでに忍び込んだし、もう学校にも用はない。タクシーを呼んで、帰りの新幹線に間に合うように村をあとにするはずだった。

それが滑り込みでタッチが来てくれるらしい。タッチの車で駅まで送ってくれる段取りまでしてくれたので、わずかな時間ではあるが会えることになった。それが今の光輔の話。

私が無理をしない範囲のスピードで学校へ向かう。展望台の出来事の余韻やもうすぐ楽しい今日が終わることも忘れるくらい四人は急行していた。

あっという間に百白中学校の正門に着く。ヘッドライトをつけた車が一台止まっていた。

「タッチ!」

私たちが声をあげる。車の中から一人の男の影が現れた。輪郭がはっきりと見えるようになって確信する。間違いない、タッチだ。

「久しぶり」

顔は当然老けていた。でも、優しいまなざしとか雰囲気はあの日のままだ。

「ごめんね、ギリギリになっちゃって」

「全然」

私たち三人と顔を合わせ、お互い笑みが止まらない。

「あっ」

タッチが渚さんに気づく。

「ああ……僕の奥さんです」

「はじめまして、福山渚です」

渚さんは律儀に頭を下げる。タッチもそれに応える。それが終わると、何から話していいか分からない沈黙が訪れる。

「……なんか緊張するな」

タッチが歯切れが悪そうに言うと、私たちは大笑いする。これで何回目だろう。もう「緊張」という言葉は聞き飽きちゃった。

「泉……、良かった元気そうで」

私は照れる。申し訳無さもあるんだけど、今はこうして再会できたことが嬉しい。

「福山も、佐々木も、……そうかみんな大人になったんだな」

光輔と景子は笑いをこらえる。照れているんじゃない。「大人」についても、もうすでに話をしたあとだったからだ。

「いっぱい話したいことあるんだけど、全部車の中でしよう。タッチお願いしていい?」

「もちろん」

光輔は腕時計を確認する。たしかに移動時間を考えると、今すぐに出るのが安全だ。新幹線出発の十五分前に駅に着く予定で段取りをしている。

「ちょっと待って、光輔」

「ええ?」

もう十分。やりたいことリストも埋まった。三人の思い出も出来た。これ以上何を望むかと自分でも思うんだけど、どうしてもここで解決したいことがある。タイムカプセルだとか、告白だとかに比べたらちっぽけなんだけど……。

私はリュックサックを探り、例のものを取り出す。

 

f:id:mukaburo:20200620105201j:plain

 

「なにこれ?」

光輔はもっとたいそうなものが出てくると思っていたみたいで、紙切れを睨みつけている。

「暗号部の最後の暗号なんだけど……」

最後の最後に申し訳ない。だけど答えだけでもさらっと聞いておきたかった。


つづく


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【「明日何しようかな」あらすじ】

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学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

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卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

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すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

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結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

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心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

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男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
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女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


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男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


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彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


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誰かに見られたくなければ、DMでもかまいません

DMは誰でも送れるように開放しています

現在閲覧しているはてなブログ「むかブロ?」はコメント欄を封鎖する予定です(気づくのが遅くなると思うので)

なので、たまに更新しているアメーバブログ「むかブロ!」にコメントいただけると嬉しいです

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「質問箱」は本来は匿名で質問を送ることの出来るツールです

が、僕は一方通行のメッセージを送るツールとしても使っています

これを使えば、どんなメッセージでも完全に匿名で送ることが出来ます

むかいに認識されたくない、だけど感想は送りつけたい

そんなあなたは質問箱に投稿してください

ただし返信は出来ません(誰か分からないので)

特に断りがない限り「これは向井だけに送りたい感想だな」と思ったらTwitterやブログで公開するのは控えます

匿名だけどみんなに見られてもいい、むしろみんなにもこの感想を読んでもらいたいという方は

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明日何しようかな?#133

「むかブロ?」140日連続更新企画

自作小説を連載しています

温かい目で読んでください

第一~六章(#1~#116)のまとめ読みはこちら

縦書き

横書き

~~~~~~~~~~~~~~~

心菜


「トイレ終わったか?」

光輔が冗談交じりに渚さんに聞く。

「うん」

「馬鹿馬鹿しい」とも言いたげな顔で光輔は鼻で息をする。かといって「なんで二人っきりにしたんだよ」とも言えず、何も言えないといった表情だ。

景子は私たちに視線を向けることなく、海を見つめている。「友達でいよう」って言われたって報告するべきかなと迷ったけれど、その必要はないみたい。明らかに「察して」いる。

「みんな、ありがとう」

再会したときとは違う妙な気まずさを感じて、私はみんなに「ありがとう」を伝える。すると三人とも笑顔が戻る。

「戻ろっか」

私の言葉にみんな無言でうなずき、私たちは展望台をあとにした。

また光輔と景子が前を歩き、私の隣には渚さんがいる。

「大丈夫?」

渚さんが心配してくれる。この「大丈夫?」はたぶん「体調は大丈夫?」の意味だと思う。

「うん。全然平気」

このメンバーといれば、ずっと元気でいられるような気がした。そのくらい体調は問題がなかった。

「渚さん、あれ貸して」

「ん?」

渚さんは私の言葉の意味が分からず、戸惑っている。

「やりたいことリスト」

「ああ」

渚さんはカバンの奥からくしゃくしゃになったリストを取り出した。渚さんが一生懸命メモしてくれたリストは二つの項目を除いて横線が引かれている。

・タイムカプセルを開ける
・好きな男の子に告白

残すはこの二つだった。

渚さんは私が言うまでもなく、ボールペンを取り出す。しゃっ、しゃっ、と二本の線が引かれた。

「これでいい?」

「うん」

横線の引かれていない項目は無くなった。

良かった。これで良かった。心からそう思える。目の前で起きる目まぐるしい出来事についていくのに必死だったけれど、それでも間違いなく人生で一番楽しい一日だった。

光輔が立ち止まる。

「どうしたの?」

景子が質問するのと同時に光輔はスマホを取り出す。どうも電話があったみたいだ。

「もしもし」

誰だろう。今、どうしても出なきゃいけない相手ってことなのかな?

「ほんとに!?……うん、……うん」

光輔の声が弾む。その瞬間、ピンと来た。誰と電話しているか。

「分かりました。じゃあ、学校で」

光輔が電話を切る。

「タッチがこっちに向かってくれてるらしい」


つづく


~~~~~~~~~~~~~~~


【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

男性。百白中学校の先生。通称「タッチ」。学校中の生徒から愛されており、光輔、景子、心菜の三人も親しい仲だった。
心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
しかし、自身の定年も近付いていた。


・早見徹(はやみ・とおる)

男性。元天才美容整形外科医。現在はラーメン屋を営む。
記事を書くために取材したことをきっかけに、ウェブライターの景子(ネオン)と親しくなる。
景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


・片寄渚(かたよせ・なぎさ)

女性。心菜を担当する看護師。
おてんばで明るい性格で、周りからも愛されるキャラクター。
患者思いの性格で、なかなか心を開かない心菜にも何度もアタックし少しずつ信頼を得ていった。


・長谷川すみれ(はせがわ・すみれ)

女性。東京の小さなアトリエで絵を描いている。景子いわく「かなりの馬鹿」
猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


・林さん(はやし)

女性。「グッバイぐっちー」を運営する。
実業家として成功を収めており、景子は数少ない友達であり、憧れでもある。

 

【むかいくんを応援したい!感想を送りたい!という方へ】

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Twitterで「#むかブロ」をつけて感想を投稿する

ややこしくて申し訳ないのですが、正式には「むか」はひらがなで「ブロ」はカタカナです

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明日何しようかな?#132

「むかブロ?」140日連続更新企画

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~~~~~~~~~~~~~~~

景子


「え?」

「光輔に付き合ってって迫ったのも、結婚してって言ったのも私なんです。あれでも少しはマシになったみたいで、彼氏らしい振る舞いとかしてくれたんですけど……、でも全然進展する気配が無くて」

光輔と付き合うだけでも、大したものだと感じてしまう。

「それで「結婚とか興味ないの?」って聞いたら「いつかはしたい」って。だったら、私としよって言ったんです」

強い。

「それでそれぞれの両親とかに報告に行ったんですけど、光輔は両親の次に景子さんに電話してたんです」

「え?」

「そのときは出なくて、光輔は落ち込んでたんですよ。私、てっきり元カノかな?って驚いて聞いてみたら「いいや全然」って」

「…………」

「それでも聞いてみたら、村の大事な友達だって言うんです。俺に一番最初に恋愛を教えてくれた友達だから、ちゃんと報告しとかなきゃって」

恋愛を教えたつもりはないけれど。

「だって、その恋バナしたときに景子さんキレたんでしょ?」

渚さんは笑っている。キレた、つもりではなかったけど。

「……それで「ありがとうね」って、手を振ったの」

そう聞いた瞬間、私は光輔につい口が滑ってしまった。

「最低」

「え?」

「最低だよ。人の気持ちも分からないで」

……いや、キレてるな。

なんか心菜のことを思うとそう言わずにいられなかった、気がする。

「光輔は「あのとき景子が女子の気持ちを教えてくれたんだ」って、少しだけ自分の行動を見つめ直すようになったって」

「光輔が?」

「はい。あとからじわじわとその言葉が効いたみたいです」

でも、心菜の気持ちには気づけなかったのか。

「手紙を書く時も三人だったんですよね」

「はい」

「そのとき景子さん怒ってませんでした?」

たしか心菜と光輔が手紙を書く書かないで言い争いをしていて、それを止めたんだっけ。私としては怒っているつもりはなかったんだけど、そう見えたのかもしれない。

「光輔、景子さんには弱いんですよ。さっきから新幹線とか乗ってるときもそう。景子さんの機嫌をよくうかがってて……」

そんなつもりは……、さっきから「つもりはない」しか思ってないな。

「手紙を書いたときに景子さんが不機嫌だったから、十年後、景子さんが喜ぶことって考えて咄嗟に「結婚してますか?」って書いたんだと思いますよ」

「本当かな?」

「たぶんそうです。景子さんに電話で報告するときも「景子より先に結婚するなんて」ってつぶやいてましたし」

失礼なやつだ。悪気がないから余計に。

「変なやつ」

私は多少の怒りと共に言葉を吐く。

「ふふ」

渚さんは吹き出す。

「いじわるですよね、景子さんも。光輔にも心菜ちゃんにもちょっと怒ってるんでしょ?」

「…………」

「だって、光輔が心菜ちゃんのこと振るなんて当たり前だし、それが分かってて告白させてるじゃないですか」

そんな、つもり、は、ない……。

「あ、ごめんなさい、私言い過ぎました……」

渚さんは私の表情が少しムッとしたのを見て、言葉を止める。

「……いやでも」

腹は立っているのは事実だけど、渚さんの言う通りだった。

私は光輔みたいに恋愛が分からなくなるくらい没頭できるものがなかった。勉強は得意だったけど、それは三人の中での話。あんなに毎日日が暮れるまで走っている光輔がどこか羨ましかった。

私は心菜みたいに誰かを好きになることもなかった。キョトンとグラウンドの光輔を見つめる心菜を見て、口ではからかっていたけれど、心では羨ましがっていたのかもしれない。

あの日卒業式があって、心菜が光輔に告白していたら……。

告白は成功してほしいと思っていた。つもりではない、本気で。でも、光輔がOKするはずがないことも分かっていた。それでも心菜の背中を押した理由……

「嫉妬……してたのかな」

最低なのは私だったのかもしれない。

心菜のことも光輔のこともどちらも大切な友達だった。それは絶対。二人の両方の気持ちを汲み取っていくうちに、私と二人との距離が空いていく気がしていた。昔はもっと近くの友達だったのになって。それを表に出すのもプライドが邪魔した。

光輔の口がパクパク動いている。九年前に見たはずの光景。もし一人で見守っていたらどんな感情だったんだろう。

九年経って良かったこと。それは私の本心を教えてくれる人が隣にいることだ。

くちびるを軽く噛みしめる私を見て、渚さんは口を開く。

「ごめんなさい、私、つい……」

「渚さん」

「はい?」

「ちゃんと私の友達を見守ってくださいね。ずっと。心菜も。光輔も」

それが出来るのはもう今は私より渚さんだ。

「分かりました」

「もう終わったみたい」

ベンチに座った二人は和やかに笑っている。

これで良かったのかな。二人の表情を見て光輔が心菜を振ったことが分かってしまうのが、今は辛かった。


つづく


~~~~~~~~~~~~~~~


【「明日何しようかな」あらすじ】

大阪にあるド田舎な村「百白(ひゃくしろ)村」

学年は全体で三人しかおらず光輔、景子、心菜は腐れ縁の仲だった

二○一○年三月、三人は卒業式前日にタイムカプセルを埋める

卒業式当日

景子の姉である莉子の失踪事件が起こる

事件の混乱で卒業式は中止が決定

心菜が光輔に告白することや、心菜が所属していた暗号部の最後の暗号を解くこと

それらを整理することが出来ずに、光輔、景子、心菜は離れ離れとなってしまう

ニ〇一八年、舞台は東京へ

事件は解決せず、心菜とは光輔、景子ともに音信不通となってしまう

景子は自宅の近くで雨宿りをしたのをきっかけに雑居ビルでアトリエを開いているすみれと出会う

すみれは腕に元カレのタトゥーが入っており、まともな職につくことが出来ないでいた

光輔は会社の帰り道、車窓からたまたまアパートの廊下にいた心菜を見かける

驚いた光輔は電車を飛び降り、心菜を探す

結局、心菜は見つからなかったが、心菜を見つけたアパートを確認することに

すると、アパートの一室にはあの日失踪したはずの莉子がいた

光輔は莉子の目撃を確信にするために、頻繁に偵察を続けることにした

一方、景子は自身の人脈を使い、すみれ救済計画を進める

まずは「愚痴聞き」サービスのオペレーターの職につき、安定した収入を得られるようにする

そして、元美容整形外科医の早見の力を借り、腕のタトゥー除去も企てる

すみれの生活は徐々に明るくなっていった

そんなさなか、公園にいた心菜と偶然再会する

心菜はガンを患っており余命宣告もされている状況で、治療のために東京に来ていた

一緒にいた看護師の渚にそのことを聞いた景子は、もう一度三人で会おうと誓う

光輔は事件解決の糸口が見つからず、自身の転勤の話もあり、かなり焦っていた

失踪事件の担当であった益川の力を借り、莉子がいたアパートに突入する

しかし、そこにいたのは莉子そっくりの人物だった

事件は振り出しに戻り、消沈する光輔

そんな光輔も景子の助けもあり、心菜とは電話越しではあるが再会する

事件が起きたあの日、心菜は不審な音を聞いていたことを告白する

事件解決、そして三人揃ってタイムカプセルを開けるためにそれぞれが動き出す

 

 

【登場人物】

・福山光輔(ふくやま・こうすけ

男性。百白中学校出身。言葉使いが荒かったりと乱暴な一面もあるが、体育会系のしっかり者でもある。
中学の頃から陸上にのめり込み、大学まで続けたが思うような結果は残せず。
大学進学を機に上京したことをきっかけに東京の一般企業に就職する。


・佐々木景子(ささき・けいこ)

女性。百白中学校出身。思いやりや優しさもあるが、ときに周りに冷たくあたってしまうサバサバした性格でもある。
厳しい家庭で育ち、大学進学まで親の言いなりで生きてきたが、もっと自分らしい生き方をしようとウェブライターに就職。
光輔や益川ともたまに連絡を取るが、姉の失踪事件は半ば諦めているというのが本音。


・泉心菜(いずみ・ここな)

女性。百白中学校出身。幼馴染三人の中では一番ワガママで寂しがりやで甘えん坊。
事件が原因で光輔と景子と離れ離れになったことがあまりにショックで、人間不信になっていた。
誰にも心を開かず大人になったが、病院で出会った渚には徐々に心を開くようになる。


・佐々木莉子(ささき・りこ)

女性。景子の姉。2010年3月に謎の失踪を起こす。
失踪の前触れのような行動は見られず、ある日突然いなくなった。


・上杉史也(うえすぎ・ふみや)

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心菜以外の二人とは中学卒業後も連絡をたまに取っている。


・益川正義(ますかわ・せいぎ)

男性。莉子失踪事件を担当する刑事。事件発生当時はベテランながら若々しい見た目。まだ中学生だった光輔らにも丁寧に接し、すぐに信頼を得る。
刑事人生で唯一莉子失踪事件のみが解決できておらず、なんとしてでも解決しようと情熱を注いでいる。
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景子はこの男が苦手であるが、すみれのタトゥー除去のために話しているうちに少しずつ打ち解け合っていく。


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猟奇的な彼氏の束縛にあい、右腕に大きな彼氏の名前のタトゥーをいれてしまう。
それが原因で就職も出来ず、アトリエで絵を描きつつギリギリの生活をしていたところで景子と出会った。


・羽田部長(はねだ)

男性。光輔の上司。
光輔はあまり好きではないが、羽田は光輔のことを一目置いている。


・松尾(まつお)

男性。光輔の部下。
彼もまた光輔はあまり好きではない。光輔いわく「近頃の若者」の悪いところ全てを集約したような奴。


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